Vol.1:安全にスポーツを行うために
運動時は,身体の状態が安静時とは異なります.例えば安静時と比べ,心拍数も上昇していますし,血圧も高くなっています.従って,一つ間違えば大きな事故や傷害を引き起こす可能性を秘めています.
そこで,傷害・疾病を予防(防止)するために以下のことについて注意・配慮する必要があります.

1:傷害・疾病の予防

睡眠をしっかりととる(とらせる)
睡眠は,人間が生きていくために必要不可欠なものです.睡眠不足の状態で運動を行うと疲れやすいばかりか,思わぬ怪我を起こす可能性があります.普段からきちんと睡眠をとりましょう(とらせましょう).また,睡眠不足の状態で運動を行うことはやめましょう(やめさせましょう).

食事をきちんととる(とらせる)
空腹時は,判断力が鈍る可能性があります.従って,普段から食事をきちんととり,極度な空腹状態で運動をするのはやめましょう(やめさせましょう).

食後直ちに運動をするのは控える
食後は,消化を促すために内臓への血流を増やす必要性があります.食後,直ちに運動をしてしまうと身体を動かすために筋肉への血流が増えてしまい,内臓に十分な血液が行き届かないために腹痛などを起こす可能性があります.食事後十分な間隔(1時間程度)を空けて運動を行いましょう.

準備運動をしっかりと行う
準備運動は,英語で「Warming Up(ウォーミングアップ)」と呼ばれるように運動を開始する前に「身体を暖める」と同時に,筋肉の反応時間や動きをコントロールする中枢神経を興奮させ,スムースに運動が出来るようにするために行うものです.
また,関節の可動域を広げることによって怪我を防止することが出来ます. 準備運動として,軽いジョギングやストレッチを十分に行いましょう.

動きやすい格好で運動する(させる)
運動は,日常生活に比べより大きな動作を必要とします.従って,運動に適した(動きやすい)服装で運動を行いましょう(行わせましょう).また,シューズについても同様です.サンダルなど身体が不安定な状態になりやすい履き物ではなく,運動に適したシューズで行いましょう(行わせましょう).
運動の種類によって,適した服装・シューズは異なります.例えば,バスケットボールを行なう際,ジョギングシューズでは,身体が安定せず,捻挫など足首の傷害を起こす可能性があります.これから行う運動に適した服装・シューズを選びましょう.

運動用具・運動器具は正しく使う
運動用具は,ある特定の運動を行うためのものです.従って,誤った使い方をしますと思わぬ怪我を起こす可能性があります.例えばバスケットボールは,バスケットをするためのボールであって,サッカーをするためのボールではありません.運動用具・器具は正しく使いましょう(使わせましょう).

運動を行う周辺は整理整頓する
これから運動を行おうとしている場所(エリア)の周辺は整理整頓しましょう.例えば,体育館で使っていないボールなどが転がっていますと,それにつまずいたりして思わぬ怪我を起こす可能性があります.また,グランド(トラック)の周辺に使っていない運動器具が置いてあっても同様です.運動を開始する前に必ず辺りを見回し,危険なもの,危険になりそうなもの,使っていないものがあったらきちんと片づけましょう.

暑い時の運動は注意する
気温が高い環境下で運動を行う際は,熱中症にならないように水分を補給するなどの十分な配慮が必要となります.また,気温が高くなる真夏の日中には極力運動を行わないなどの配慮が必要となります.絶対に無理をしないよう(させないよう)にしましょう.

運動を中止.中断する(させる)勇気を持つ
運動を開始する前,準備運動中,運動中に少しでも体調がすぐれないと感じた(見受けられた)時はすみやかに運動を中止・中断しましょう(させましょう).常に,自分の身体と対話しながら運動を行いましょう(行うようにさせましょう).

整理運動をしっかりと行う
運動を行うと,疲労物質が身体に溜まった状態になります.この疲労物質は身体のすみずみまで十分に酸素を補給することで少なくすることができます.従って,運動終了後は,ゆっくりとジョギングなどを行ない,血液の流れを良くし,身体に十分な酸素を取り込むようにしましょう.また,運動直後は,身体から必要以上の二酸化炭素が排出されるため,体液がアルカリ性になり,血圧が急激に低下したり,意識障害を起こしたりする可能性があります.従って,徐々に呼吸を整えリラックスさせていく必要性があります. 従って,運動終了後は必ず整理運動を行いましょう(行わせましょう).

2:応急処置

上述した注意点を守り楽しく運動をして頂きたいのですが,不慮の状況で傷害が起きてしまう可能性もあります.ここでは,簡単な応急処置について説明します.

突き指
バレーボールやバスケットボールを行なう際に良く起きる傷害に突き指があります.突き指は指の捻挫です.症状は,指が赤く腫れ上がり,ずきずきと痛みます.この時,指を動かすことが出来ず,変形が見られる場合は骨折の可能性もあります.
突き指の応急処置としては,出来る限り早く冷水などで冷やし,固定したのち医師にみせます.

肉離れ
急激に動いた時に筋肉や腱などに損傷・断裂が起きた状態です.急激なダッシュなどを行った時に痛みが起こり,そのまま動くことが出来なくなり,運動後に痛みが増します.応急処置としては,安静にして良く冷やし,医師にみせます.

打撲
転倒などによって,身体を物にぶつけたりした時に皮膚の下の組織が炎症を起こします.症状は,腫れて痛い,内出血による変色などです.応急処置としてはすぐに冷却し,なるべく動かさないようにして医師にみせます.

熱中症
熱中症には,「熱痙攣」「熱疲労」「熱射病」の3つがあります.

「熱痙攣」
基本的には「生理食塩水(0.9%)」を飲ませることで回復します.

「熱疲労」
涼しいところに運び,頭を高くし寝かせます.この時,何か飲める状態でしたら「生理食塩水(0.9%)」あるいは,さらに薄い食塩水を飲ませます.また,手足を身体の中心へ向って軽くマッサージすることも有効です.意識がはっきりしていない場合や,何も飲めない場合は直ちに医師の診断が必要となります.

「熱射病」
熱射病は専門的な治療が必要であるため,直ちに医師にみせる必要があります. 身体を冷やしながらすみやかに病院へ運びます.身体を冷やす場合は,全身にぬるま湯をかけ,風を送るか,体表に近い太い血管が通っている部位(頚部,脇の下など)にタオルなどを当て,氷などで冷やします.

擦り傷
転倒などによって,皮膚が傷つき血が出た状態です.応急処置としては,泥などを洗浄によって,よく落とし,消毒します.またこの時,出血が止まらないようであれば,患部にガーゼなどを当て,手で圧迫し止血を行ないます.

捻挫
捻挫は,関節が正常の可動領域以上に動いたり,ひねったりした時に,靭帯などに損傷を起こす傷害です.軽度の場合は,腫れも少ないようですが,重度になると靭帯が完全に断裂して,腫れもひどく内出血を起こすことがあります.応急処置としては,患部を出来る限り早く冷やし,固定した後,医師にみせます.

その他の傷害および応急処置方法

「出血の手当て」
1. 直接圧迫止血法
傷口にガーゼなどを当てて圧迫します.傷が手足にある場合は,心臓より高く挙げて動かさない様にします.

2. 間接圧迫止血法(直接圧迫止血法と併用)
直接圧迫止血法で出血が止まらない場合は,直接圧迫を行なったまま,心臓に近い止血点を指や手で押して止血します.また,直接圧迫止血法が行えない時には,間接圧迫法のみを行ないます.

3. 止血帯
止血帯は,出血した部位より心臓に近いところを縛って出血を止める方法ですが,安易に行うことは危険ですので避けるようにして下さい.

「骨折」
以下の症状は骨折しているかどうかの判断基準です.

腫れる
変形
皮膚の変色
動かしたり触れたりすると激しい痛みを伴う
動かせなくなる

骨折しているか判断できない場合は,骨折していると考えて処置します.
まず,全身および骨折箇所を安静にします.
添え木などを当てて動かさないようにします.
添え木は骨折箇所の上下の関節を含めることの出来る長さが必要です.また,十分な硬さおよび幅が必要です.板や傘など身近にあるもので代用が出来ます.
安静な状態を保ちながら運搬し医師にみせます.

「目に物(ボール)があたった」
すぐに横に寝かせ,水で濡らしたタオルなどで冷やします. 目の周りの腫れがひどくなったり,目の中が出血している時は出来るだけ安静にして医師にみせます. また,運搬の際には傷病者を起こして歩かせないようにします.

「脳貧血」
脳貧血は脳への血液の流れが一時的に少なくなった時に起こります.顔面が蒼白になり,めまいや気を失ったりします.応急処置としては,まず水平に寝かせ,ひどい時には足を高くします.気道を確保できるような体位を保ち,衣服を暖め,毛布などで保温します.
意識が回復するまでは飲食物を与えないようにします.倒れた時に怪我をしなかった調べます.回復が遅い時は,別の病気の可能性もあるので医師の診断を受けるようにしましょう.

参考資料:
財団法人日本体育協会「スポーツ指導者必携書」
財団法人日本体育協会「地域スポーツ指導者共通科目教本」

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