スポーツの指導を行なう上で,データを管理することは重要であり,そのデータを活用することでさまざまな情報が得られます.スポーツ指導者は,このようにして得た情報を基にさまざまな意思決定,すなわち指導を行なう必要があると考えられます.
しかしながら,スポーツの指導を行なう上では,時として単なる数字からなるデータや,そこから得られる情報だけでは測れないものがあります.
スポーツ指導者が対象としているのは選手,すなわち人間です.人間は,非常に複雑で神秘的なシステムを有する生物なのです.ヒトゲノム計画により人間の全容が明らかにされてようとしていますが,現時点では,まだまだ人間の全てを理解するには至っていません.
従って,スポーツ指導者が単なる数字からなるデータや,情報だけで人間,すなわち選手を理解することは難しいことでもあるのです.
しかしながら,一方で,私たち人間は非常に素晴らしい能力を持ち合わせているのです.例えば,母親は,我が子の体温や体重などのデータを管理していなくても,病気などの異変に気が付きます.このいわゆる「気づき」というものは,人間の持つ素晴らしい能力の一つなのです.
従って,スポーツ指導者は,データ管理を行なう以上に,選手とのヒューマンコミュニケーションを通じて得られる,さまざまな「気づき」を活用しながら指導を行なう必要があるといえます.